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SS:桜散る散る、恋も散る

桜散る散る、恋も散る CP:なのは←フェイト

私が恋散る季節のことを知ったのは今から五年も前になる。

「なのはのことが好きなんだ。」

そう言った彼女は今よりも幼くて、でも歳以上に大人びて見えた。
震えてしまいそうなほど緊張しているのに、いやに声がまっすぐ聞こえたことを
よく覚えている。
だから一目見て、ああ本当は怖いのに一生懸命がんばっているんだ、と
分かってしまった。
それだけに、私もとても苦しかった。

「……私もフェイトちゃんが好きだけど、友達だから。
 友達だから、ごめんなさい。」

そう言うのは、本当に苦しかった。



*



彼女は、あ、と軽く目を見開くとすぐに顔を伏せてしまった。
相変わらず震えてはいなかったけど、それを見て断った罪悪感から
泣いていいのに、なんて勝手なことを思った私は今考えれば随分な人間だと思う。
お互いが沈黙した時間はそう長くはなかった。
かける言葉が見当たらない私を彼女は笑顔で助けてくれた。
彼女は優しかった。
初対面の人にだって簡単に分かるような取り繕った無理な笑い方だったけど
それが精一杯の、いや頑張りすぎた結果だったんだと思う。
見た瞬間、罪悪感で喉が詰まったような感覚が気持ち悪かった。

「ご、ごめんね。こんなつまらないことに付き合せちゃって。」
「そんな、つまらなくなんて……。」
「ううん。ちゃんと気持ちを伝えて、聞けてよかったから。」

やっぱり無理な笑い方だったようで、表情はすぐに変わってしまった。
まるで仕方がない、と言わんばかりの寂しそうな笑顔。
よく見ていた困ったような顔と似ているはずなのに、その日に限って
全く違って見えた。

「もうね、これから先言うことはないと思ってたから。
 だから今日言えて本当によかったんだよ。もう今日しかないから。最後だから。」

彼女の言うとおり、その日は中学最後の日、卒業式だった。
遠くからは卒業生と在校生と父兄の悲喜交々とした声が聞こえる。

「今日しかないから今日言うって決めてたんだ。最後に言おうって。
 ちゃんと言えたから。聞いてもらえたから。だから、本当にありがとう。」

そう言って深く腰を折ると、肩から長い金色の髪が滑り落ちた。
私は頭を下げられるようなことを、お礼を言われるようなことは何一つしていない。
顔を上げてほしくてしどろもどろに声をかけた。
それでも長らく頭を下げていた彼女は、顔を上げるともう一度言った。

「なのは、本当にありがとう。」
「……うん。」

告白を断った後、本当はこれからも友達でいよう、仲良くしてね、と言おうと思っていた。
でも彼女の顔はやっぱり寂しそうで、気休めにもそんなことは言えそうになく
それ以上、私に言える言葉はなかった。
それが私達の最後だった。



*



彼女はあの日、今日しかないから、最後だからと何度も言った。
でもそれは中学最後の年を、彼女のいうところの『つまらないこと』で
思い煩わせないための私への配慮ではないかと、ふと思い立ったのは
それから一年後のことだった。
中学を卒業し、進路の別れた彼女を含めた友人達とは会うことが非常に少なくなった。
連絡も密に取るようなことはなく、中でも彼女からは清々しいほど連絡がなく
最後に携帯に連絡を受けたのは実に一年前だった。
私はそれまで中学卒業という文字通り中学最後の日のことだと思っていた。
でも本当は違った。
彼女の言ったことは正しかった。

ああ、そうか。最後ってそういうことなのか。

果たして私の予感は当たり、この状況はその後四年間続くことになる。



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コメント

更新されることを いつまでも待っています。

なのはのお話を書かれているサイト様の中で一番大好きですo(^ω^)o

投稿: ナポリタン | 2011年5月27日 (金) 14時33分

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