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SS:茶黒

茶黒 CP:ティアはや

「コーヒー淹れたんやけど。お砂糖とミルクいる?」
「あ、あたしがやりますよ。」
「まあええから。で、砂糖とミルクは?」
「え、あー砂糖は二つで、ミルクもお願いします。」
「ほいほい。」



*



カップに砂糖を落としながらふと思う。
結構さっぱりしたもんなんだ、と。
いわゆる事後の朝。
もっともロマンティックな雰囲気は昨日いくらか味わったから
このくらいが丁度いいのかもしれない、と思いながら辺りを見回す。
今日も晴れそうな気持ちのいい朝日と、白いシャツだけ着た恋人達。
手元にはカップが二つ並んでて、中身はコーヒー。
状況を改めて把握すると、急に笑いがこみ上げてきて吹き出してしまった。

「どうかしたんですか?」
「いや、よくあるやん。シャツ一枚羽織って眠気覚ましのコーヒー淹れて
 「お砂糖いくつ?」っていうやつ。
 あんなんそうそうないわって思ってたけど、まさか自分が
 やることになるなんてなあって思ったら、なんやおかしくて。」

多分どこぞのバカップルなら毎日のようにやってそうだけど、まさか自分が
する日が来るとは本当に思わなかった。
それだけに夢みたい、と余計笑えてくる。

「しかし、ティアナはミルクにお砂糖二つか。
 うん、覚えた。」
「はやてさんはブラックですか?」
「うん。目ぇ覚めるから。」
「だめですよ、寝起きにブラックなんて。」

ちびちびと口元に傾けていたカップがひょいっと攫われた。
手癖の悪さにちょっとジト目で見やるも意外と平然としている。
いつも気を遣ってばかりなのに、たまにこうして勢いずくから分からない。
でもそういう気心の知れた態度は、普段自分達の仲にある壁を
崩そうとしているように思えて気分がいい。
ただしコーヒーは別だ。

「へぇ、寝起きに二杯も入るん?」
「二杯も飲みませんよ。」
「じゃあ返して?」

はい、と手渡されたカップからは薄っすらと白い湯気が立っている。
手前味噌だが香りも中々。芳しいそれに導かれるままゆっくりと唇を寄せると
とろりとした表面に朝日がきらりと反射し仄かに色を放った。
上品で、やわらかなこげ茶色。そう、それはまるでミルクを垂らしたようで……。

「って、これティアナのやん。」
「飲んでください。」
「ブラックは?」
「あたしが飲みます。」
「ずるい。」

そっちだってブラックオンリーじゃん、とブーイング。

「じゃあそれを半分飲んでください。あたしもこれを半分飲みます。
 そしたらまた交換しましょう。ミルクと砂糖入りもブラックも、半分ずつです。」
「えー。」
「飲まないとブラックコーヒーは手元に戻ってきませんよ?」

どうやら本気らしくて、なんか小さい子どもを見るような目をして笑ってる。
この野郎、背は低いけど年上なんだぞ、と僻み根性丸出しで睨んでみても
効果はなかった。
渋々こげ茶色の液体に口をつけるとやっぱり甘ったるい。

「ティアナって結構意地悪なんやね。」
「はやてさんの方が絶対意地悪です。」

何を失礼な、ひどいやつ、と思ったのでちょうど半分飲み終えた頃に
言ってやった。

「なあ、どんな味やった?」
「苦かったです。」
「いやわたしとの間接キスの味。」

柔らかい朝日の中に黒い飛沫が飛んだ。

「昨日キスしたときとおんなじ味した?」
「んな、ば……!」

多分『何言ってるんですか』と『馬鹿じゃないですか』を言いたかったんだと思う。
もしくは『何馬鹿なこと言ってるんですか』?。
結局言語化できなくてプルプル震えているのが面白い。
顔真っ赤。超真っ赤。
そしてこっちはこっちでニヤニヤニヤニヤ。
気持ち悪いくらい笑ってる。

「やっぱりはやてさんの方が意地悪ですよ!」

だって悔しいから。
別に年上の意地とかじゃないけど、結構負けず嫌いだから。
でも、久しぶりに飲んだ甘めのコーヒーも悪くなかったし、
朝からいいものが見れたから。
半分以下になったブラックコーヒーを奪い返すと
穏やかな朝に似つかわしくない勢いで煽った。

「ご馳走さまでした。」



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