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SS:グレーゾーン

グレーゾーン CP:なのは←フェイト

シリアス。ちょっとフェイトさんが暗くて恋愛観が独特。

昔、約束をした。

『ずっと友達でいようね。』

私は守れなかった。



*



グレーゾーンという言葉がある。
意味は中間。どっちつかず。
今の私はまさにこの言葉のとおりだった。
友達なのに、友達になりきれない。中途半端な存在。
そんなことを考えながらテーブルに二人分の料理を置く。
今日は食卓を一層騒がしくさせる声が聞こえない。
だからこんなことを考えるのだろう。
小さくため息をついて席に着くが心は晴れなかった。

「二人きりになるの久しぶりだね。」

心なしかなのはが嬉しそうに言うので控えめに頷く。
別に嬉しくないとは言わないけれど、それでどうということもない。
特別何かするわけでもないし、期待するだけ無駄だ。

「あ」

お茶に口をつけようとしたなのはが声を上げた。
点けっ放しにしていたテレビからはオープンされたばかりの
遊園地の宣伝が流れていた。

「遊園地か……もう随分行ってないな。」

何もこんな時に、と思う。
一人しみったれた空気を纏っている時にこういうのが目に入ることほど
惨めに感じることはない。

「ヴィヴィオってまだ遊園地行ったことないよね。
 ねぇ、今度行ってみようよ。」
「ん、いつぐらいかな。」
「うーん。私の休みがここでヴィヴィオのがここで……
 あ、よかった。重なってる。フェイトちゃんはどう?」

半透明のスクリーンが二つ。なのはとヴィヴィオの予定表。
自分もそれに倣い予定表を出すがその日は生憎と任務の文字が入っていた。

「ごめん。その日はちょっと……。」
「あーそっか。残念。」
「でもヴィヴィオに遊園地の話したらすごく喜ぶよ。
 私のことはいいから二人で行ってきなよ。」
「うーん……。一緒に行きたかったな。」

仕事なら無理強いはできない。そんな風に仕方のないこととはいえ
残念そうな顔をしながらもあっさり引くのがなんだか申し訳なくて
自分でも思いも寄らない言葉が口をついた。

「私のことはいいから。二人きりだとつまらないかな?
 誰か誘ってみたら……そうだな、ユーノはどうかな。」
「ユーノくん?そういえば最近会ってないな。」

恋というのは意外と苦しいもので。
なのはに早く相手が出来てくれないか、と思うことがたまにある。
そうすればこの想いは誰に知られることもなくひっそりと朽ちていき
諦められるのではないか。
このとき言った言葉はそんな私の隠された想いの一部の発露だったんだろう。
もちろん普段はそんなこと考えない。
相手がいなくてよかったと思っている。
そのおかげでこうして一緒に居られるのだから。
しばらく考えるとなのははかぶりを振った。

「……やっぱりだめ。フェイトちゃんも一緒じゃないとやだ。」
「なのは……。」
「せめて最初だけは三人で行きたい。」
「……わかった。ちょっと先になるけどなんとか予定空けるよ。
 三人で行こう。」
「うん、約束だよ?」

でも恋というのは意外と諦められないもので。
ほんの小さなことに希望を捨てきれないのだ。
私が頷くとなのはは機嫌良さそうに食事を再開させた。
ふいに懐かしいフレーズが頭をよぎる。

針千本飲ます、指切った。

初めてこの言葉を教えてくれたのはなのはだった。
意味が分からない私にそれはそれはおどろおどろしい話をして脅かしたっけ。
怖くなって、絶対約束は破らないと意気込むと可愛いと笑われた。
からかわれたと知って真っ赤になっているとごめんごめんと小指が差し出される。
そしてなのはが言う。
もう意地悪言ったりしないと約束する、ただし私にも約束してほしい。
それは私もなのはに意地悪を言わない約束。
一応私は今回の被害者である。それは不公平ではないか、と言うと
世の中には『ふびょうどうじょうやく』があるんだよ、とおどけて言った。
何だそれと思いながらもまあいいかと指を絡めた。

『約束だよ?』

その約束は守られたかといえばノーである。
グレーゾーンなんて言葉を知らなくても曖昧な意味を持たせることはできるのだ。
あの時、嘘をつかないとは約束しなかった。
仮に約束しても私は嘘をついただろう。
グレーゾーンという言葉を知った後なら尚更である。
もっと日本風にいえば嘘も方便。
ただし私に都合のいい内容だが。



*



夕食の片付けをして入浴を終えるともうそれなりの時間だった。
二人でソファに座ってテレビを着けると丁度ドラマがやっていた。
主人公はある女子学生で、彼女はある男子学生のことがあまり好きではなかった。
でも一騒動あってその中で自分を守ってくれた彼に好意を持つ。
しかし実は彼は結構な人気者で自分なんかよりずっと綺麗な女性多数に
迫られているという。勝機がない、と感じた彼女はせめてもと
その未練を断ち切るために彼の元に告白しに行く、という話だ。
私にはこの主人公がうらやましくもあり、憎らしくもあった。
こんな真似、私にはできない。
私が口に出したらきっとなのはは困るだろう。
困って困って、そして私にごめんと言う。
自分は何も悪くないのに。
その一言を聞けたなら、きっと私はもうなのはには触れない。
そうすれば吹っ切れるかも知れない。
でも私にはできない。
だって、それって勝手すぎる。

自分から思いを寄せたのにそれを断ち切るのを
相手に任せるなんて、なんて身勝手な。

嘘に嘘を重ねるのは慣れれば簡単なもので、真実を告げることに比べたら驚くほど容易かった。
守れない約束なんてするもんじゃない。
あの時の約束も私は守れなかった。
でも嘘をつかないなんて約束はない。
だから私はこれからも嘘をつく。
私にしか見えない灰色の嘘を。



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